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素材にこだわった日本のスウェットブランドといえば吊り編み機で編まれた生地が特徴の「ループウィラー」が有名ですが、今回はループウィラーと対極をなすモノづくりを行っているもう一つのこだわりスウェットブランド「Kepani (ケパニ)」をご紹介します。
Kepani(ケパニ)は2006年に創立した日本のスウェットブランド。
Kepaniとはハワイの言葉で「日本人・日本の」を意味します。
こだわりの糸と製法から生まれる裏起毛スウェットや、スウェット地のパーカー、ジャケット、手袋等の小物がメインプロダクトとなっています。
「永続できるモノつくり」をテーマに、洗練された旧きよきモノを現代の技術で再現しようと、ひたすらに素材と向き合いながらモノづくりをおこなっている日本のブランドです。
ケパニのスウェットはシンプルなデザインであるからこそ、素材をとことん追求して作られています。
柔らかな肌触り、着心地の良さ、着古したような自然なメランジ感。
そしてそれらを実現する、ラフィー糸を使用した裏起毛素材がケパニの最大の特徴です。
ラフィー糸とは綿に落ち綿と呼ばれるリサイクルコットンを混ぜて紡いだ糸のこと。
kepaniのラフィー糸にはトルファンの高級超長綿とギザアメリカの落ち綿が使われており、肌触りの良さも特徴です。
トルファン綿は中国の新疆(しんきょう)ウイグル自治区に位置するトルファン地区で作られるコットンのこと。
その品質はアメリカのスーピマコットン、エジプトのギザコットンと並び、世界三大高級綿の一つに数えられています。
超長綿(ちょうちょうめん)とはコットンの種類の一つで、綿花からとれる繊維の長さが繊維長が35mmを超えるものを言います。
繊維の長い綿を撚って作られた生地はしなやかで肌触りがよく、何度洗ってもしなやかさを失わないことから高品質なウェアに使われています。
落ち綿とは綿から糸を紡ぐ工程の中で、落ちてしまったくず綿のこと。
落ち綿を再び糸に撚り上げることで自然なムラが生じ、ラフで優しい質感になるのが特徴です。
ラフィ裏毛素材はKepaniが「裏毛スウェット=吊り編み」というイメージを覆そうという意気込みで作られたこだわりの綿100%素材。
一般的に、スウェット生地というと「吊り編み機」で編まれた生地が品質が良いとされていますが、kepaniの最大の特徴でもある裏起毛素材は、糸の特徴を最大限に生かすようにシンカー編み機を使って編まれています。
吊り編み機とはニット生地を編み立てる旧式の編み機で、日本では1900年頭から半世紀以上にわたってニット生産に使用されてきました。
生地を編むときに糸に余計な力をかけないため、柔らかな肌触りと、何度洗っても質感を失わない耐久性が特徴です。
しかし、吊り編み機は1時間に平均1メートル程しか編むことができないという生産性においてのデメリットがあり、高速シンカー編み機の台頭により吊り編み機は姿を消していきました。
今日では吊り編み機を使用して生地を生産しているのは世界的に見ても日本の一部の工場のみとなっています。
シンカー編み機とは現在多く使われている編み機で、機械制御することで1時間に平均10~15メートルほどと、吊り編み機に比べ10倍以上の速さで生地を生産できるのが特徴です。
大量生産のための機械であるがゆえ、一般的に吊り編み機と比べると糸が切れやすく肌触りや耐久性において劣るという人もいます。
kepaniの裏毛は3本の糸(表糸・中糸・裏糸)から出来上がっており、独特の光沢感とムラ感のあるオリジナルのラフィー糸を、太い糸を編み立てる編み機に対して、わざとすこし細目の糸を採用して甘く編みあげることで、シンカーで編みながらもふんわりとした肌さわりと、何年も着古したかのようなヴィンテージ感を表現しています。
さらにそこから非常に細かな針で裏地側へ起毛加工を施し、起毛加工後に生地を洗い加工することでシープスキンのような肌触りと保温性を再現。
そして毛羽立った生地をタンブラー加工で、一気に縮めることで洗うたびに型崩れせずに元の形に戻るという性質を生み出しています。
このように一言でシンカー編みを使用しているといってもkepaniのラフィ裏毛素材が出来上がるまでの工程には様々な加工が施されており、そのこだわりが吊り編み機に劣らない品質を生み出しています。
via:https://kepani.stores.jp/
ラフィ裏起毛のWジップのパーカー。
Wジップで様々なスタイリングに合わせ易いパーカーとなっています。
via:https://kepani.stores.jp/
ラフィ裏起毛のプルオーバーパーカー。
via:https://kepani.stores.jp/
ラフィ裏起毛のオーソドックスなクルーネックスウェット。
前面&背面の首元につけられたリブ編みが、オーセンティックな雰囲気を醸成しています。
その他、スウェットパンツやカーディガンといった定番アイテムから、タートルネックなどの新型アイテムもあります。
2015年AWからは従来のkepaniの生地に使用しているラフィ糸にストレッチ糸を編みいれた「Raffy Stretch Fraise」で作られたTシャツが加わりました。
ラフィ糸独特のふっくらとやわらかで光沢のある質感と、着古したようなメランジ感はそのままに、ストレッチを入れることでフィット感が増し、直接肌に触れるTシャツ、カットソーにピッタリの素材感となっています。
Kepaniの魅力は、昔からあるものを大切にし、それを昔ながらの方法で作るのではなく現在の方法で再現しようとしているところ。
モノづくりをテクノロジーによって効率化するのではなく、旧きを再現するためにテクノロジーを駆使し、試行錯誤しているブランドと工場の努力によってケパニのスウェットは生まれています。
ループウィラーが、昔の技術で新しいモノをつくる「コンテンポラリー」であるとするならば、kepaniは昔のモノを今の技術で作る「リアルスタンダード」であるといえるのではないでしょうか。