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近年、ファッション製品として、傷や色むらのあるレザーを使ったファッション製品として扱われ、その経年変化を楽しむ消費者が増えてきましたが、レザーの品質やレザーがどこでどのように作られているかまで意識している人は少ないかもしれません。
今回は日本が世界に誇る高品質のレザーであり、レザー製造会社でもある栃木レザーをご紹介します。
栃木レザーは栃木県に本社を構える、昭和1937年創業の皮革(ひかく)製造メーカー。
植物性タンニンなめしを専門にレザーを製造するタンナーで、天然の植物由来のタンニン槽の中でじっくりとなめされた栃木レザーは日本一の品質を誇ります。
皮から革を製造する職をタンナーといいますが、日本で最高のレザーを製造するタンナーがこの栃木レザーです。
しなやかで堅牢、そして年月を重ねるごとに味わい深く変化していく栃木レザーは、日本のみならず世界中で評価されています。
動物の皮は、そのままの状態で使用すると腐敗したり、柔軟性がなくなっていきます。それを防ぐために樹液や金属系の薬品に漬け込み、「皮」から「革」へ変化させることを「鞣し(なめし)」と言います。
なめしには大きく分けて、草木の中に含まれているタンニンを用いてなめすタンニンなめしと、塩基性硫酸クロムという化学物質を用いてなめすクロムなめしがあります。
タンニンなめしとクロムなめしと両方行うコンビネーションなめしという方法もあります。
タンニンなめしとは植物に含まれる、タンパク質と強く結合する特徴をもつタンニンを利用したなめし方で、古代エジプト時代から行われてきた伝統的ななめし方です。
タンニンなめしによってできる革は生成り色をしており、これが一般的にヌメ革と呼ばれています。
ヌメ革は硬く丈夫で型崩れしにくく、日焼けや酸化、油分を吸収しやすいため、経年によりアメ色へと変化していく特徴があります。
ひび割れや硬化を防ぐために定期的なメンテナンスを必要としますが、経年やメンテナンスによる変化、変色を「味」とする人から支持されています。
タンニンなめしのレザーはヌメ革として扱われる他、染色をして色をつけたり、オイルを含ませてオイルドレザーなどにも加工されます。
クロムなめしは塩基性硫酸クロムと呼ばれる化学薬品を使うなめし方で、短時間に安くて大量になめすことができるため、現在市場に流通している大半がクロムなめしのレザーとなっています。
タンニンによってなめされたレザーが生成り色をしているのに対し、クロムによってなめされたレザーは青みがかったグレーになり、ここから染色やオイルアップなどの加工が行われます。
クロムなめしのレザーはタンニンなめしにくらべて軽量で経年変化が少なく、防水性、耐熱性、耐傷性に優れ、メンテナンスをしなくても耐久性に優れているなどの特徴があります。
現在流通している革製品のほとんどがクロムなめしであるように、生産性、機能性だけをみるとクロムなめしのレザーの方が優れているように思えます。
しかしレザーの質は、「皮」の質に大きく左右され、製造工程によっても品質は変化するため、どちらのなめし方がいいかとは一概にはいえません。
耐久性が必要な場合にはクロムレザーが適しているでしょうし、装飾性が必要な場合にはタンニンレザーが適していると言えます。
タンニンなめしのレザーの特徴は何といっても経年による変色、変化が大きいということ。
傷や色むらの無いキレイな革が良いとされていた一昔前に比べ、天然皮革の傷、ムラといった個体差を「味」とし、使い続けることで経年変化を楽しみたいという人が増えてきたことでタンニンなめしのレザーの需要が高まり、その中でも最高品質を誇る栃木レザーがメーカーのみならず、一般の消費者にも注目されているのです。
栃木レザーは冒頭で記述したとおりタンニンなめしを専門に行うタンナーですが、単にタンニンレザーを製造しているだけではありません。
皮から革になるまでに20以上の手間と時間をかけた工程と独自のなめし方法により、タンニンレザーでありながらしなやかさと堅牢性を持ち合わせたレザーを生み出しています。
タンニンなめしには大きく分けて2つの製法があり、ひとつは栃木レザーの特徴でもあるピット製法とよばれる、巨大な水槽に張ったタンニン溶剤の中に皮を、薄いタンニン濃度の水槽から濃いタンニン濃度槽へと順次漬け込んでいく伝統的な製法です。
もう一つはドラム製法と言い、巨大なドラム缶に皮とタンニン溶剤を入れ、グルグル回すことで遠心力によりタンニンを皮へ浸透させていく製法です。
少ない水でも洗えるドラム式洗濯機と同じ原理ですね。
ドラム製法は約24時間で一度に100枚近くなめすとができるので、今日のタンニンレザーの大半がこのドラム製法によってなめされています。
対してピット製法は自然にタンニンを浸透させるため漬け込みに約20日間かかるなど、手間も時間もかかる上に設備を設置する広大な敷地を要するため、国内ではほとんど行われなくなった製法です。
ドラム製法に比べて負担をかけずに自然になめされ、芯までタンニンの成分が浸透するため、型くずれしにくい堅牢な革に仕上がると言われています。
栃木レザーではピット製法によるタンニンなめしを行うことで堅牢性に優れた強く粘りのあるレザーを生み出しています。
栃木レザーでは原皮を水洗いするところから出荷に至るまで20以上の工程を踏み、商品になるのに約3ヶ月の期間を要します。
本来ヌメ革は硬い性質を持ちますが、栃木レザーのヌメ革は職人の手によりなめしと、加脂と呼ばれる柔軟性を与える作業、セッターと呼ばれる革を伸ばす作業などを繰り返し、革を均一に伸ばしながら繊維を壊さずキメの細かい革へと仕上げられていきます。
そのためタンニンレザーの特徴である革本来の自然な風合いを残しながら、しなやかで、耐久性にすぐれたレザーを生み出すことができるのです。
栃木レザーが高品質な理由はこうした職人達の手間と時間の賜物と言えます。
YesはYes Crafts社が「本当にいい革を伝えていきたい」という想いから栃木レザーを使用したレザーアイテム展開する日本のファクトリーブランド。
栃木レザー誕生の発起人であり、皮革の企画、開発を行っているのがハシモト産業という会社ですが、そのハシモト産業に勤めていた方が独立して立ち上げたブランドです。
かの有名なWEBショップ「北欧暮らしの道具店」や、全日空ANAのマイレージクラブでも取り扱われるほどの高品質で魅力的なアイテムを展開しています。
via: http://yes-crafts.jp/
Yesの代表的なシリーズであるスクエアパーツシリーズは一枚一枚つなぎ合わせたスクエアパーツから生まれるレザーアイテム。
革の部位による質感の違いや、自然に刻まれたシワやキズなど、革そのものの個性を活かすために、一枚の栃木レザーをあえて正方形に切り分けて、一枚一枚パズルのように組み替えながらデザインされています。
パーツごとに色味や質感が異なり、それぞれが独自の経年変化を遂げていくため、使い続けることでパッチワークやモザイクタイルのような仕上がりになるのも魅力です。
他にも財布やカードケース、iPadケースなどラインナップも豊富で、シンプルでありながらも、他のレザーアイテムとは違ったユニークなアイテムをお探しの方におすすめです。
筆者も財布とカードケースを愛用しています。
栃木レザーは伝統的な方法を職人が手間隙をかけて行うことでできるタンニンレザーの最高峰。
じっくりとなめされた革は、しなやかで頑強でありながら使い続けるうちに味わい深く変化していきます。
使い込んで初めて完成に近づく栃木レザーを使用したアイテムを使い込み、自分だけのレザーアイテムを「作ってみる」のもいいかもしれません。